【ホラー映画日記】シライサン【知ったらダメ型の恐怖がやってくる】

 こんにちは、山本清流です。

 

 今回は、『シライサン』を見てきました。軽く紹介したいと思います。

 

 

 あらすじ

 とある旅館でとある怖い話を聞いた人たちが、その後、次々と不審死する。心不全と診断されるが、なぜか、眼球が破裂した状態で発見されるのだった。その不審死で弟を失った主人公は、同じく友達を失った女性とともに、事件の真相を探り始める。その中で『シライサン』という存在を知り、主人公たちもその怖い話を耳にしてしまうのだった……。

 

 怖かったポイント

 〇眼球が異常に膨れ上がっているシライサンの見た目

 〇毎回、同じパターンで登場するシライサン

 〇目を逸らしてはいけない、という謎の縛り

 

 とくに、毎回同じパターンでシライサンが登場するのが、いい味を出していました。

 

 まずは電灯が点滅したり翳ったりして、気配がして、振り返ると、屈んでいる女性がいて、その女性がゆっくりと立ち上がって、そうして近づいてくる、という流れです。

 

 何度もその流れが出てくると、いい意味で先が読めてしまい、電灯がぱちぱちと点滅したりしただけで、ぞっとするわけです。

 

 秀逸だったところ

 個人的に秀逸だなぁ、と思ったところは、シライサンが登場するメカニズムについて詳細な設定がしてあるところです。

 

 ネタばれになっちゃうので、詳しくは書きませんが、シライサンから逃げる方法として提示される案はすごく筋が通っていて、納得しました。

 

 そんなメカニズムが実際に存在するなら、現実にシライサンがいてもおかしくないじゃん! って思っちゃいました。

 

 おすすめしたい人

 本作『シライサン』は、「知ったら襲われる」という形のホラーで、小学生たちが都市伝説として話していそうな感じのタイプです。

 

 本格的な恐怖を味わいたいという人には向いていないかもしれません。分類としては、ひきこさんとか、口裂け女とかいう感じの、そのあたりに近いと思ってもらえればいいと思います。

 

 ただ、シライサンのビジュアル(眼球が魚みたいに肥大している)が十分に怖いので、ビジュアルに弱いという人は、かなり怖がれるのではないでしょうか。

 

 以上です。『シライサン』の紹介でした。

 

 

佐藤究『テスカトリポカ』の(解説という名の)完全独自解釈。

 さて、『QJKJQ』にて江戸川乱歩賞を受賞した佐藤究は、そのあと、長編は二作(『サージウスの死神』は中編と理解した)しか出していないが、どちらも意欲に満ちている。寡作だが、それが気にならないくらいに一作ずつのクオリティーが凄まじい。佐藤究の作品は、読んでいると、なにか人類の秘密を覗き見ているような感覚にさせられる。

 

 とにかく、そんな仰々しい言葉を並べたくなるくらい、僕は佐藤究という作家にとても感謝している。同時代にリアルタイムで追いかけることができて、とても幸せである。

 

 今回は、佐藤究の最新作である『テスカトリポカ』の面白いポイントについてご紹介したい。

 

 いろいろな魅力が詰まっている大長編なので、ひとつだけのポイントを抽出するのは失礼かもしれないが、ここはあえて、僕がいちばん気に入ったポイントに的を絞りたい。

 

 僕がいちばん魅力を感じたのは、「人間とはなにか?」という問いに対して、経済人(ホモ・エコノミカス)という答え方をしているところだ。僕はそのように感じた。

 

 ホモ・エコノミカスというのは、経済学における人間の捉え方を揶揄する目的で使用されることが多いのであるが、『テスカトリポカ』においても、その揶揄の気持ちが垣間見えるようだった。それはある種、警告でもあり、「本当にそれでいいのか?」という問いかけにもなっている。

 

 簡単に説明すると、ホモ・エコノミカスというのは、なんでもかんでも合理的に行動して自分の利益を最大にしようとする人間のことだ。とてつもなく計算能力に優れていて、自分のためだけにひた走る人。そういう想定から、経済学理論が組み立てられている。そんな経済学への批判として、「そんな人はいない」というものがよくある。

 

 しかし、ちょっと待ってほしい。『テスカトリポカ』に登場するバルミロはどうだろうか? 時には仲間を殺すことも顧みず、あの手この手を使って経済的にのし上がろうとする意欲に満ち、その能力に恵まれている彼は、まるで、ホモ・エコノミカスのようだ。

 

 僕は独自に、『テスカトリポカ』はホモ・エコノミカスの実在を示し、それを揶揄するための小説だったのではないか、という捉え方を提案したい。

 

 もちろん、こんな捉え方をしてしまうのは僕が経済学部の学生であるせいかもしれないが、それならそれでいい。とにかく、僕は、『テスカトリポカ』が描く世界が混沌とした資本主義の残酷さを抉りだし、そこから人間存在の性質や、そのあり方について鋭い洞察を提供しているように思えてならない。

 

 人間とはなにか。佐藤究がおそらく追及している疑問であるが、それは現代においてはミクロ的な視点で語ることはできない。

 

 人間というのは、制度や信仰でかろうじて世界とつながっている存在に過ぎない。ひとりだけを取り上げて、人間とはこういうものですよ、と語ることはできないのであり、その者が置かれている環境によって規定されている側面がかなり大きいのである。

 

 では、いま現在、人間が置かれている状況はなにか?

 

 ――資本主義だ。

 

 それも、ただの資本主義じゃない。暗黒の資本主義である。

 

 そんな環境に置かれている人間は、当然、その影響を強く受けているわけである。そして、そのシステムの中には、明らかに勝者と敗者が存在する。日本とメキシコが。贅沢と貧困が。カルテルとの競争が。その中でのし上がろうとするのはきわめて一般的な欲動であり、一歩間違えれば、人間は、いつでもホモ・エコノミカスに変貌してしまう危険性を秘めているのだ。

 

 『テスカトリポカ』は、そこに大きなメスを入れる。大きな声で提言している。これは本書を読んでいただくしかない。

 

 そういうわけで、僕は、経済システムによって規定され、束縛され、その性質さえも塗り替えられている人間たちの模様を楽しく読んだ。

 

  面白いことに、お金がなければ大勢の人間は協力できないが、お金があることによって競争が生まれているという側面もある。メキシコでつくられている違法薬物は日本の顧客にいきわたり、日本の顧客と麻薬の売人がお金を介して「協力」している。しかし、その一方で、メキシコの国内では麻薬カルテルが殺戮を繰りひろげ、お金を求めて「競争」している。

 

 明らかに、生贄が必要だ。人間と人間が協力するためには、誰かを犠牲にしなければいけない。結局のところ、現代においても形を変えて、生贄という儀式が続いているのかもしれないとまで思わされた。

 

 僕たちは、生贄たちを無視することで、物質的に豊かな生活を続けているのかもしれない。そして、なぜか、精神的には貧しい状況が、日本中に拡がっているように思えてならない。

 

 どうすればいいのか?

 

 その答えは『テスカトリポカ』の中に転がっているかもしれない。ぜひ、本書を手に取っていただけたら、嬉しい。

【オススメ】レヴィットミクロ経済学基礎編【ミクロ経済学がわかる】

 ミクロ経済学の初歩的なところは勉強したけど、もう一歩、踏み込んで勉強したい。でも、上級や中級の教科書になると、急に、内容が難しくなってきて、よくわからない。読みやすくて、わかりやすい中級のミクロ経済学の教科書が欲しいなぁ。そう悩んでいる方に、朗報があります。

 

 『レヴィットミクロ経済学基礎編』、これです。本日は、これを紹介してみたいと思います。

 

 

 【レヴィットミクロ経済学基礎編とは】

 ・めちゃくちゃ丁寧な解説がついている

 ・出てくる事例がとても面白い

 ・現実のデータについても楽しく紹介している

 ・豊富に計算問題がついている

 

 以上のように、読者目線に立って、とても読みやすくつくりこまれています。そのおかげで、初級以上の内容であるにもかかわらず、イメージを持って、ストーリーを読むようにミクロ経済学を楽しく学ぶことができます。

 

 著者のレヴィットは、日本でもヒットした『ヤバい経済学』の著者であり、本書にも『ヤバい経済学』というコラムがいくつもあります。

 

 オバマ大統領がパパラッチを減らすためにはどうすればいいのか、など、面白いトピックが詰まっていて、興味が長続きするように工夫が凝らされています。

 

 【わくわくしながら読んだ】

 経済学ってもっと難しくて退屈な学問なんだろうという思い込みを打破してくれました。とてもわくわくしながら読んで、その間は、小説を読むよりもこっちを読んでいた方が楽しい! と思うくらいでした。

 とくに、理論だけでは説明を終えていないところが魅力でした。

 

 理論だけを列挙するように取り上げて、それで実際はどうなの、というところがおろそこになっている教科書もあります。

 

 その点、本書は、むしろ、現実との関係に力を入れているので、現実とミクロ経済学の関係を見失わないでいることができます。

 

 【レヴィットミクロ経済学基礎編の注意点】

 ・とてつもなく 細かいので、冗長なところもある

 ・ちょっとだけ、誤字脱字が多い

 ・一度だけ読んだだけでは習得が難しい

 ・先に入門編を読んでおいたほうがよい

  

 注意点としては、以上の四つが挙げられます。

 

 冗長というのは、詳細に説明してくれている弊害でして、勉強の進んでいる人からすると、なんだか簡単なことを繰りかえししゃべっているだけのようにも思えるかもしれません。しかし、だからこそ、初心者にはどこまでも優しいんです。

 

 また、その一方で、いちばん最初に本書を手に取るのは、ちょっと厳しいのではないかとも感じます。本書より先に、入門書などを勉強しておくといいかもしれません。

 

 【お気に入りの一冊】

 僕にとってはお気に入りの一冊になりました。本棚に並んでいる背表紙を見るだけで、うっとりとしてしまいます。

 

 本書はとてつもなく細かく解説してくれているので、独学でやるのにも充分だと思います。僕は、本書を通して、世界の味方ががらっと変わるのを体験できました。

 

 以上です。ご紹介文を読んでいただき、ありがとうございました。

自己紹介

 はじめまして。謎の男です。

 

 ブログ、はじめました。このブログでは、自分で読んだ小説や専門書などの紹介をしていきたいと思います。

 

 これから定期的にやっていきたいと思います。よろしくお願いします。